あるときに、また、人間関係がうまくいかない、という方がいらしたのね。そして、前と同じジャンルという(笑)、再上演というやつかもしれない(笑)。同じ状況だったの。そして、多分トラウマの質も同じ。という方が出てきたのね。そういう患者さんがみごとに私の前にいらした。僕は、前の患者さんが絶対僕自身のトラウマになっているわけね(笑)。だから前と同じ嫌ーな感覚がするわけ。ここでトラウマ出せば楽になるし、出さなければこのままベールをかぶっている感じでずっと行くんだろうな、でも出さないと治らないし、という葛藤で揺れたわけ。それで、あるとき他のセラピストに、こういうケースで多分あのトラウマがあるんですよね、ああいうトラウマがあるのだけれども、どうしたらいいですかね、と言ったら、そのセラピストが「『EMDR』といういいものがあるよ。」と言うのね。「EMDRって何ですか?」とね。もう身を乗り出して、メモを取りながら。一回もメモなんて取ったことのない僕がね(笑)。いつも人の話、8分の1くらいしか聞いていないからね(笑)。でもその時はもう「EMDR」とメモを取って。何だそれ、ということでね。EMDRは、眼球運動・要するに眼球を動かしてトラウマを除去するという方法なんですよ、ということだったのね。そしてその「EMDR」の本を、その頃もインターネットがあったので、ネットでアメリカのサイトから本をダーっと取り寄せて、そして次の日にばーっと読んで、それでやり方覚えて、次の日にはもう使い始めていたのね。恐ろしいでしょう(笑)。今では講習を受けないと使ってはいけないということになっているのね。その頃は全く日本に入ってきていなかったから、使っているセラピストがいなかったわけ。こういうものがアメリカではやっていますよ、という話だけだったのね。だから僕が「EMDR」の発表をしたときに結構「おぉ」みたいなね、みんなに感心されたくらいなのね。そして使った。
 最初は軽いケースからみたいな(笑)。夫婦関係で悩んでいるんですけれども、みたいなね。「じゃあやりましょう!」と言って「夫のことを思い出しながら目を動かしましょう」という感じで(笑)。いやね、これは真面目にやると結構大変なのね。指をまっすぐ見てください、目を動かしてください、という風に。でも不思議なの。EMDRをやると、ダーっと患者さんが泣くのね。おお、すげーと思って、これはもしかしたら曝露療法と同じ効果があるかもしれない、と思ったの。びゃーびゃー泣くわけ。鼻水から何からみんな出てくるのね(笑)。うわー感情も出てきた、おもしろい、という感じで。でもある種拷問みたいなものなの。大体24回くらい指を見させないといけないわけね。指をずーっと見つめさせる。泣こうが何しようが、いいから見て!みたいなね(笑)。共感も何もないわけよ。なんかサディスティックかな、でも楽しいみたいなね(笑)。でもやっぱりね、ボーリングでビギナーズラックというものがあるじゃない、最初やる人というのは結構ストライクが入るわけね。ところがね、最初からストライクがこんこん入ってね、みんなが楽になっていくから、いやーこれはいい、絶対に素晴らしい、と思って、片っ端から使い始めたのね。大体うまくなった頃に、そのリベンジマッチ(笑)。その前述のトラウマの人に向き合ったわけ。その患者さんにトラウマを出すという作業をして、そして出てきました、はい、涙がだーっと出てきました、さあ、指を見て、みたいなね(笑)。ずっと見ていてよ!そして指をがーっと振って、いろいろな記憶が出てくるのね、おもしろいのはEMDRをやると色々な記憶が出てくる。確かに記憶は出てきます。そして記憶が出てきて涙を流して、1時間40分、丸々やって楽になりました。そしてその方がそれ以来、一切そのいやーな感覚に苦しむことなく、生きられるようになったということがあるわけなんですよね。それで、よし、リベンジ完了とか思って、それから片っ端から使い始めたの。そして毎日毎日これ(指を左右に激しく振る)。もうカックンカックンいうのね(笑)、ここら辺(肩のあたり)の間接が。何せ速く振らないといけないしね(笑)。患者さんも怖がってさ、何かトラウマを出すと目をやられる、みたいなね(笑)。でも僕はね、本当に真剣だったの。トラウマを消せばみんな楽になると思っていたから。これは本当にそうだったの。トラウマ消せば楽になる。そう信じていたのね。だから片っ端からトラウマを消していこう、と思って一生懸命一生懸命やっていたわけ。