ある時、ある患者さんが来たときに大変なことが起こったの。手を振ってみたら、指が取り付かれたように、薬指→中指→小指、と順番で曲がりだしたわけ。うわ、なんだこれは、俺もとうとう取り付かれたか!(笑)みたいな。結構焦るものなのよ、これ。初めての発見って意外と怖いものなのよ。それ以外にも、薬指だけがこうやってぱたぱたぱたぱた動いたりするわけ。他にも硬直したまま、とか色々なパターンが出てきた。そして実際に後輩にも同じようなパターンが出てきたのね。それで、これはなんだろう、ということで、その反応が出たとき、患者さんの話をよーく聞くわけ。そうしたら、薬指がぱたぱた動くときは、患者さんが強迫感、すごーく強い強迫感があるときに指がぱたぱた動く、ということがわかったのね。そして、中指→薬指→小指という順番で曲がる時は、トラウマ。心的外傷、それも単一の、ということが段々パターンとしてわかってきたのね。そして薬指→中指→小指という順番で曲がる時は、これは複合のトラウマ、complexトラウマ。1つのトラウマが出てきて、次のトラウマが出てきて、こうやって重なっているトラウマの時は、薬指→中指→小指の順番で動く、ということが、段々と見えてきたの。中指だけ曲がる時は、これは見捨てられ不安。こう読めてくるとね、段々おもしろくなってきてね、うわー、こんなのがあるんだ、と。そして患者さんに伝えると相手はびっくりするのね。「なんでわかるんですか?」ってね。へぇー、みたいなね。妙に腑に落ちるのね。これはおもしろい、と思いました。他には、人差し指は、憎しみ・恨み、あとは自己嫌悪感とかふかい感情。苦しみね。苦しみに付随するのが人差し指の反応。こんなこと教えていいのかな。まあ、いいや(笑)。小指のときは、怒り。親指は苦痛。身体的な苦痛。こうやって臓器反応に基づく反応パターンというものがある、ということを見つけたのね。
 ちなみに薬指単体は不安感。曲がったままだと恐怖感というかたちになるのね。ぱたぱたが強迫感。これでやると、曝露療法がハンディにできるわけ。そして新人にも教えられる。これはいい!と思ったのね。そして、もしかしたら、この応用で、出てきた反応のパターンで指を刺激したらトラウマが消えるんじゃないかな、なんてこんな悪い考えを考え始めたわけ。そして、やったのね。出てきたパターン通りに指を押さえてもらった。こちらで共感するんじゃなくて、指を押さえてもらったのね。そうしたら、これは初めのうちはあまりわからなかったのだけれどもね。患者さんはあまり変わらなかったの、実は。あんまり変わらなかった。ところが、変わらなかったのだけれども、要するに、TFTの時は、不快な感覚というものが記憶から切り離された、不快感が切り離された、というところがあったのね。ところが、この指で押さえる、治療者が捉えた通りの指を押さえると、切り離された感覚が記憶ときちっと統合される、ということを見つけてしまったの。うわぁ!これすごい!って思ったの。問題は何かといったら、トラウマというのは感情と記憶が切り離されてしまうことなのね。わかる?記憶に対して感情がないの。客観的に、あの時は悲しかっただろう、とか、あの時は辛かったです、とかまるで他人事のように話すのね。ところが、きちっとはめると、自分のものになるの。これがおもしろい。そしてそれを曝露療法でやっていたわけ。そして、指を押さえてもらったら曝露療法と同じ効果で短時間、ということを見つけたのね。これはいけると思った。治療者が捉えた指の順番で押さえてもらうということをするのね。そうすると感情がはまる。でもおもしろいのは、その時の嫌なことは思い出すのだけれども、それをちゃんと嫌!言えるの。ちゃんとその時のことを嫌!と言ったら、こちらにちゃんとその感情が伝わってくるわけ。だからはまったなと思うのね。そしてその後にそれが長続きしない。要するにずーっとその感覚に捕らわれるということがなくなるの。思い出せばちゃんと不快なのね、でもしばらくすると、それがあんまり長続きしない。まさにこれは記憶が自分のものになったということ。要するに切り離しを助けるのではなくて、記憶がきちっと自分のものとして統合されて、そして生きられるようになる、ということが見えてきた。おお、これはおもしろい!と思ったのね。