春風

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春風

大嶋信頼ブログ 緊張しちゃう人たち

2018/04/07 春風

昨日の春風は、すごかったんです。

 

強い風に大きな木がゆらゆらと揺れて、暖かい季節に芽吹いた青々とした葉っぱたちが「サーッ」という心地よい音を立てて一斉に同じ方向を向きます。

 

これまでだったら、その葉っぱたちが立てる音は、風の冷たさを感じさせる音だったのですが、同じ音のはずなのに、私はその音が全く違って聞こえているように感じていました。

 

そうなんです。

 

春に吹く風って、他の季節に吹く風とどこか違っていて、まるで優しい色がついているように見えたりしていました。

 

まるで柔らかい、優しい色がその風についていて、私を優しく包み込むような不思議な感覚が私の中にあったんです。

 

初めて学校に登校するとき、一緒に登校するお姉さんとお兄さんの列の真ん中に私は姿勢を正して並びながら、その風を感じていました。

 

前にあるお姉さんの大きな赤いランドセルと、後ろにいるお兄さんの黒いランドセルにその風が遮られたときに、私の耳には脇を通る車の音が聞こえてきます。

 

自分のランドセルの心地よい重さを感じながら。

 

歩きと共に上下に揺れるランドセルの中の教科書を背中で感じ、その教科書の内容を自分がどんな風にこれから勉強するのか、などを想像しながら、私はみんなと一緒に道を歩いていました。

 

そんなことを考えていると、いつのまにか地面を見ながら歩いている自分がそこにいる時に、春風がサーッと吹いて、木々の葉を大きく揺らします。

 

すると、木漏れ日がキラキラと私を照らすので、いつのまにか私はその光の方を見上げるようになります。

 

そうしていると、その葉っぱの向こうに広がる青空を感じながら、その空から降り注ぐ爽やかな空気を胸いっぱいに吸い込み、そして私の中からゆっくりとその空気を私に手を振ってくれている優しい葉っぱたちに返していくんです。

 

さわやかな葉っぱがこすれる音を聞きながら、私は、み空色(みそらいろ、と読みます。薄い青のことです)の空から降り注ぐ空気を胸いっぱいに吸い込み、青々とした葉っぱたちに返していきます。

 

そんな時に、私はフッと家族がこの同じ道を歩いた時に、私と同じことを感じるのだろうか?と想像したくなりました。

 

このゴツゴツした道を歩きながら、後ろの子供のランドセルについているキーホールダーの金属の音が耳に入ってくる中で。

 

時折、強く吹く春風が「その鞄いいね!」というような感じで鞄をユラっと揺らす感覚を体で感じた時に。

 

これまでいろんな思いをしてきた家族たちは、何を感じるのかな?と歩きながら、考えたくなっていました。

 

今、振り返ってみれば、そんなに長い道のりではなかったはずなのに、その当時の私には延々と続く道のような感覚があり、その道すがらで家族が歩んできた人生を振り返りたくなることもあったのかもしれません。

 

それとも、今、私が春風に吹かれて、その風が見せてくれるキラキラとした木漏れ日の光と、その向こうに広がる青空から降り注ぐ爽やかな空気を胸いっぱいに満たした時のこの感覚を、長い道のりを歩んできた家族と一緒に感じたかったのかもしれません。

 

そして、胸いっぱいにした空気を木々の葉に返した時に、木々の葉が喜んで手を振ってくれているなんてことを教えてあげたい、という優しい気持ちに春風がしてくれたのかも、と今となっては振り返るんです。

 

さらに私はその当時の自分に戻って、そして、ランドセルに詰め込まれた教科書が心地よく上下に揺れる感覚を感じながら、みんなと歩調を合わすために時折小走りになり、フッと春風に揺られる木々を眺めていたあの頃に聞いていたあの木々の音を思い出したくなっていました。

 

他の季節の風に吹かれて木々が立てる音とはどこが違っていたのだろう?って。

 

やがて、小さな歩幅で歩いていたのに、いつのまにか私たちは目的地に到着するんです。

 

目的地に到着したとたんに、一緒に歩いてきたお兄さんもお姉さんも一斉に友達のところに翔って行ってしまいます。

 

目の前を遮るものが無くなり、そして後ろ盾も無くなったその時に、私は何を感じていたのか。

 

初めての場所で「自分はこれからどうしたらいいんだろう?」って顔をしかめたくなったのかもしれません。

 

そんなしかめっ面をしたくなった私を春風が優しく吹いてフッと私のランドセルを押してくれたんです。

 

幼くて軽かった私は、その風に押されて「トットット!」という感じで大きな校舎の方へと歩いてしまいます。

 

「なんでこのタイミングで?」とその時の幼い自分は思ったのか思わなかったのか。

 

そんなことを思い出している今の自分は、あ!そういえば!いつも、あのタイミングで優しい春風が私の背中を押してくれていたよな、と懐かしい感覚がよみがえってきます。

 

もしかして、あの時も、って。

 

そう、大きな校舎を目の前にあんなにしかめっ面になりそうだった私が、春風に背中を優しく押されて歩いた時に、

 

思わず笑顔になって

 

「ありがとう!」って

 

優しく私の背中を押してくれた春風に言いたくなったあの頃の私を私はいつのまにか私の中で感じていたのかもしれません。

 

そんなことを感じながら、私は優しく吹く春風を肌で感じています。

 

そして、私の耳に心地よく当たる春風からのメッセージが何かあるのかな?と耳を澄ましたくなるんです。

 

すると、私は、この時期に広がるみ空色の空が私の中にも広がっていく、いつの間にか、そんな感覚を感じているのかもしれません。

 

優しい春風とともに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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