心理カウンセリング
心理カウンセリング
的確なアセスメントができなければ、的確な臨床はできません。初回面接では主な症状、問題、家族構成、生い立ちなどの詳細な情報を伺うことで、今後のカウンセリング方針を立てます。
そこでの情報はいわば面接マップです。個々の抱える病理や問題を明確にし、豊富な臨床経験から、どのようなアプローチをすることが問題の解決につながるのか仮説を立てます。その際には、心理的要因だけでなく、医学的・生理学的な立場からも考えます。
例えばうつ病の場合、気の持ち様で気分が変わるという誤解から、周囲の人が励ました結果、余計な負担を与えてしまうことがあります。もちろん考え方や認知を変容させることで、マイナス思考をプラス思考に変えることは可能となります。しかし、何でも心理的な問題で捉えてしまうと、適切なセラピーは行えません。高血圧や糖尿病といった疾患と同じように、うつ病も遺伝的な身体の病であるという医学的な見方もできなければなりません。他にも甲状腺疾患や婦人科系の問題といったホルモンバランスとの関連など、必要に応じて医療と連携を取りながら、様々な角度から心と身体の両面を分析します。心理学だけに捉われると、事実を見失います。主観的な判断ではなく、客観的に科学的にクライエントの情報をとらえることで、無駄なく最適の治療を行うことができるのです。
カウンセリングでは共感が大事だと言われます。自分の気持ちをわかってくれる人がいるだけで気分が和らぐことがあります。ところが、そもそも共感とは意気投合することではありません。共感とは同じ経験をしたか照合する作業ではありません。共感はわかろうとする姿勢やその気持ちに寄り添う過程のことなのです。
人生を飛行に喩えるならば、苦しい出来事に遭遇したときには、誰しもが一度は墜落しそうになった経験があるかもしれません。安全運転で目的地までたどり着けることもありますが、あるときは悪天候に行く手を遮られ、またあるときは自分の運転ミスから、思うような運転ができなくなります。カウンセリングには今にも折れそうな翼で必死になって飛んでいる方、落ちそうになりながらも必死に飛ぼうともがいている方も来られます。そんな墜落寸前で地面すれすれを飛んでいる飛行機でも、そこに共感する人がぴたっと寄り添うことで、その飛行機はまた上昇し、大空に飛び立っていくことができるのです。どんなに危なっかしく見える操縦をしていても、そこに意味を見出せれば見た目には不安定な飛行も曲芸飛行になるのです。人は本来高く自由に飛べる力を持っています。その能力を引き出せるようになるまで、あるいは目指す目的地にたどり着けるまで、ひたすら寄り添い共に飛び続ける。そのような共感を日々心に留めています。
心理カウンセラーは人の心を読める、人の心を見透かせる技術を持っていると誤解されることがありますが、カウンセリングは人のあら探しをするわけではありません。確かに、悩みを解決するためには、まずその苦しみの原因を探らなければならず、過去の生育歴や家族関係など様々な情報を伺います。その際には、相談者は自分の過去や悩みを告白することにためらうことがあります。まるで心を裸にされたかのように感じてしまうからです。
それが治療の妨げになることがあります。ご相談者の話をうかがう時に大切なのはその人の心に美しさを見出すことです。カウンセリングは自分の中の恥部や影と向き合う過酷な作業であると思われがちです。確かに過去の辛い体験を語ることは苦痛を伴うことがあります。しかし、人は死があるから生があるのと同様に、影があるから光があるのです。カウンセリングの目的は悲しい過去をさらけ出すということではありません。その辛い体験に光を当て、美しさと意味を見出すことです。どんなに悲しい話にも、どんなに平凡に思われる話にもドラマがあります。人生という舞台に立ち、そこで自分を演じきれたとき、美しいドラマが生まれます。インサイト・カウンセリングの目指すのは、涙あり、笑いありの感動するカウンセリング、面白いカウンセリングです。
「主訴」(何が問題なのか)、「治療目標・見立て」(何のためにどのような変化を期待するのか)、方法としても「技法・手段」(その変化を引き起こすために何をするのか)、「予後」(その結果どう変化したのか)・・・インサイト・カウンセリングの事例検討では、その方法論にもきちんと着目します。実際にどうすれば問題が改善されていくのか、的確に意見を論じ合うことで、プロとしての結果を出せるようにします。
また、そのための方法論は多種多様な形態を取り、一つのやり方にはこだわりません。そのケースに合った方法論を見つけ出します。
食わず嫌いの人は料理評論家になれません。一つのやり方にこだわって、それを一つのケースに無理矢理当てはめるのではなく、その人にあったメニューを作ります。色々な方法論を吟味して、最高のレシピを作りあげます。
インサイトのカウンセラーはドロドロに疲れるまで仕事をします。このメリットは、一つはご相談者さまの気持ちに近づくことと、チームの連帯感を高めることと、もう一つは相手を裁かなくなることです。果てしなく疲れると意識があまり働かなくなり、善悪の判断で裁くことがなくなります。
また、インサイト・カウンセリングはカウンセラー同士のフォロー体制と連携を大切にしています。一人で抱え込むのではなく、みんなで支え合います。一人でできないこともチームになればできることがあります。カウンセリングはカウンセラーとクライエントのあくまでも一対一の契約に基づいて行われるものですが、その二人の関係を支える職場のスタッフや家族、友人がいるのも事実です。いらっしゃった方々が少しでも楽に生きられるように、スタッフ一同でサポートさせていただきます。
「何でこんな問題が起きてしまうのだろう?」と何度も同じようなことで悩んでしまう。
その原因を考えて、たくさんの原因は思いつくが、原因を思いついたからといって何にも解決に至らない。
原因を探求すれば一時は楽になるが、またすぐに同じような悩みに苦しめられる。
このように原因を追求してもちっとも悩みは解決しないということがあります。
実際、悩みの原因の多くは心の傷にあり、これが癒されることで悩みの悪循環から解放されることがあります。
その理由は、苦痛が伴う心の傷は人の感覚を麻痺させてしまうから。
あまりにも強い苦痛や、長期にわたる苦痛を与えられることで感覚の麻痺が起きやすくなるのです。
必要な感覚が正常に働いていれば、危ない時に危ないと感じることができるので、危険を回避することができます。しかし、心の傷で感覚が麻痺している場合、危ないことを感じられなかったり、危ないとわかっているけど、危険を実感できずに危険を回避することができなくなってしまいます。
心の傷を治療することで、危ないものを察知する感覚や、自分にあっているものを探し出す感覚が戻ってきます。
それまで、わかっていても行動できなかった自分から、感じて行動できる自分へと変化するので、それまで悩んでいて行動できなかった自分から解放され、より自由な生き方へと変化します。
心の傷は必要な感覚を麻痺させますが、それとは逆に、反応しなくてもよいものに対して鋭敏に反応するようになってしまうこともあります(これを「覚醒調整困難」と言います)。
周りが危険に満ちていて混乱状態になっている時に妙に落ち着いてしまい、危険回避の行動を取ることができなくなるだけではなくて、平和で幸せを感じる時に妙に緊張が高く、ちょっとしたことでもすぐに危険と認識し、過剰に反応して混乱を招いてしまうのです。
男女関係で例えてみると、相手から暴力を受けそうな時に逃げなくて、相手から認められて良い関係性が築けた時に、ちょっとしたことで怒ったり、怯えたりして相手の感情を逆なでしてしまい、自分が苦しくなるような関係を作ってしまいます。自ら、不必要なことに反応して、安定した状態をぶち壊してしまい、絶えず苦しんでいる状態です。
心の傷を治療することで、過剰に反応することがなくなり、安定している時に幸せを実感できるようになります。
心の傷が残っていると、自分にとって何がベストなのか、何が幸せなのかわからなくなってしまいます。
心の傷により感覚の麻痺が起きているので、自分が一番欲しているものを感じられなかったり、実感できないので行動に踏み出せません。
自分の幸せを感じられたり、そのために行動したりすることができないので、自分自身が何であるのか、自分の人生が何であるかなどがわからなくなってしまいます。
また、心の傷から過敏になったり、過剰に反応してしまうことから、絶えず周りに気を使うようになってしまいます。絶えず緊張し、周りに気を配ることにより、やはり自分というものが見えなくなってしまいます。
心の傷により自分の感覚が麻痺している上に、周りに過敏になりすぎるために余計に自分というものが見えなくなってしまうのです。
そのような状態の方でも、心の傷を治療することで、周りのことがあまり気にならなくなります。
「だらしなくなる」と取れるかもしれませんが、それまでものすごく気になっていたものが気にならなくなり、自分自身に集中することができるようになります。
絶えず、他人に気を使って見えなかった自分のことが、ここではっきり見えるようになることがたくさんあるのです。