FAPセミナー初級コース◆スタッフレポート
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9月とはいえ、記録的猛暑の名残の中、今年もFAP初級セミナーが開催されました。
オンライン参加者21名、会場参加者29名、計50名の方が参加されました。
このレポートでは、今年の初級セミナーのポイントと、10月に開催するプレ上級セミナーについてもほんの少し、先取りしてご紹介します。
今回は、FAPが脳の炎症にどのように作用するか、というのが大きなテーマでした。
人間が意思決定を行う際、脳内の神経ネットワークがどのようなしくみになっているかについて、セミナーではハーバード大学の研究結果を使って解説したのですが、何かを選択する時に、脳内では興奮性ニューロンと抑制性ニューロンが、あるルールに従って作用している、という点が重要なポイントになります。
さらにシナプスについてですが、シナプスが刈り込まれすぎた場合、脳内は独裁主義となっていきます。独裁主義とはその名の通り、思考の単一化です。言い換えると、思い込み、執着、白黒思考、などがわかりやすいでしょうか。
シナプスが独裁主義になることで抑制性ニューロンが働かなくなり、興奮性ニューロンが活性化し、妄想などの様々な症状が出てきます。
※シナプスとは神経細胞であるニューロンと次のニューロンを繋ぐ、つなぎ目の事です。つなぎ目とはいっても隙間があり、この隙間は目に見えないほど狭く、神経伝達物質の放出により情報を伝達しています。
フィンランドのケロプダス病院で行われているオープンダイアローグという技法でも明らかになっていますが、統合失調症のクライアントに対して複数の治療者が関わる事により、脳内のシナプスの独裁主義は民主主義へと変化していきます。
独裁主義から民主主義って何の話?と思われるでしょうが、オープンダイアローグでは複数の治療者が関わる事により、クライアントの思い込みが解消されて抑制性ニューロンが正常に働くようになるのです。(ちなみに、治療者のクライアントへの思い込みも解消していきます。)
結果的に、統合失調症の妄想や幻覚などの症状が消えていく、という素晴らしい技法です。
でも、オープンダイアローグって、そんなに簡単に日本で受けられるのかしら?という疑問が出てきます。
そうですよね、そこで、いよいよFAPの登場です!
治療者は、クライアントに対して思い込みがあります。そして、それは興奮性ニューロンが働いている状態を指します。
しかし、治療者がぶらぶらと利き手を振って、指の反応を確かめることでその思い込みは解消されます。
あれ?目の前のクライアントは悲しいと訴えているが、指は反応していないぞ、という風に、治療者の思考と、指の反応は異なることが多々あります。
治療者はどうしても主観的になりがちですが、FAPを使用する事により、オープンダイアローグの技法と同様に、抑制性ニューロンを働かせてくれるのです。
セミナーでは、ペアになって実際にFAPの技法を練習していきます。
参加者の方からは具体的な質問や、笑いを引き起こす質問が飛んできて、講師陣はとても嬉しそうでした。
参加者の皆さま、本当にお疲れさまでした。
この2日間で初級の内容を習得された皆さまが、今後、世界の様々な場面で指をぶらぶらさせるのかと思うと、微笑ましい限りです。
『選択の科学』(シーナ・アイエンガー著)の中に、このような記述があります。
~選択が人におよぼす悪影響を軽減する方法が、徐々にわかってきた。その方法とは、選択の幅をさらに広げることではなく、判断の一端を他者に委ねる、あるいは自分の行動に制約を加えることで、選択のプロセスを自分に有利に変えることだ。(第7講 選択の代償 より)
「判断の一端を他者に委ねる」とは、まさしくFAPでやっていることなのです。
日頃から、何かを選ぶ際には指を振って反応を確かめる、という習慣をつけておくことは、きっと私たちの人生にプラスに働くことでしょう。
そして、、、
FAP上級セミナーは11月に開催予定ですが、初めて上級へ参加される方に向けて、プレ上級セミナーを10月6日(日)に開催します。
上級セミナーはナラティブ・アプローチを理解している事を前提として講義が始まるので、プレ上級では、このナラティブ・アプローチについてわかりやすくお話する予定です。
また、FAPがどのような変遷をたどってきたのか、歴史についてもお話します。これを理解していないと、本当の意味でFAPを理解することが難しいのです。
上級なんて難しそうで自信がない、、、と思われている方も、プレ上級セミナーに参加することでその不安は解消されることでしょう。
米沢宏先生の、精神科医目線での専門的かつ、ユニークなお話が聞けるチャンスでもあります!
当日は、参加者の方々の声に合わせてライブ感覚で進めていきますので、どうぞお楽しみに。
興味を持って下さった方のご参加を心よりお待ちしております。
(心理カウンセラー 加藤 慶美)