成功する別時間軸

心の傷を癒す心理相談室、株式会社インサイト・カウンセリングです

03-3433-2721

〒105-0021 東京都港区東新橋2-16-3カーザベルソーレ4F

営業時間/AM10:00~PM18:00 定休日/日・祝

成功する別時間軸

大嶋信頼ブログ 緊張しちゃう人たち

2016/06/14 成功する別時間軸


将来、自分が成功している場面を想像する。

 

大学に入り直して、そして、大学での研究や文章が認められて、人からの称賛を浴びて年収が上がって、そして立派な家を買う。
自分の年収が上がったことを想像して、物件までインターネットで探してしまって「ここに住んだらどうなるのだろう?」と夢を膨らませる。

 

フッと我に返って見ると、全く気力がない自分がここにいる。
かったるくて、面倒臭くて、何もする気持ちになれない。成功を夢見るのだったらもっと勉強すればいいのに、と自分ではわかっているのに、それが出来ない。本すらまともに読むことができない。

 

こんなことを考えていたって何も変わらないことも重々わかっているのに、気力が湧かないから何もできない。

 

そして「他の人のように恵まれた環境で生まれ育っていればもっと状況が変わっていたのに?」と嘆く。
こんな過酷な環境に育っていなければ、自分はもっと成功していたのに、と再び成功している場面の想像の世界へと戻っていく。

 

普通の人がこんな悩みを聞いたら「口ばっかりで何もやらない弱虫!」と判断してしまう。
頭でっかちでちっとも現実の世界のことをわかっちゃいないし、見ようともしない、と馬鹿にする。

 

専門家が見ると「自己愛性人格障害の可能性が」とか「妄想がちょっと入っていて現実見当識が低いかも?」となる(=妄想に取り込まれて現実を適切に判断できない状態)。
成功に対するイメージを膨らませているのにも関わらず、行動するエネルギーが欠如していることから「精神的な病かも」という判断になっていく。

 

私は、この方の話をお聞きしていて、その知能の高さから「もしかしたら、成功することはあり得るのかもしれない」と思ったりする。むしろ、この方の場合、実際に別時間軸で実際に成功を収めて、そして家を購入しているのかもしれない、と考えてみると実に興味深い。

 

ちょっと話は変わるが、最近、サーフィンを始めてみて自分のアホさ加減にあきれることがある。
沖にスイスイと出て行って、そして、大きな波に気持ち良さそうに乗っているサーファーたちを見て「いいな~!」とうらやましくなる。なぜか悔しくなって、自分も大きな波に何度も飲まれながら沖に出てみるが、その頃には腕の力が全く無くなり、波が来ても波のスピードに合わせてボードを漕いで波に乗ることができない(ひえ~!)。せっかく必死の思いで沖まで来たのに、いい波が来ても全て乗ることが出来ずに逃してしまう。そして、一つも波に乗れず、惨めで哀れな気持ちなって、身も心もボロボロになって岸に帰っていく(チ~ン!)。

 

要するに、サーフィンを何年もやっている人は、それまでの経験値があるから、力を使わずに沖に出るスキルがあるし、波が来た時に力を使わずにボードの角度を適切に波に合わせて「ひょい!」と乗るタイミングを身体で覚えている。色んな波で何度も何度も経験しているうちに身につけたスキルを短期間で、ということは難しいのはわかっているのだが、何とも悔しいもの。

 

将来、成功している場面を想像してしまって、その想像からなかなか抜けられなくて、それをした後に妙な惨めさと落ち込みと気力のなさに苛まれるのはこれと同じようなことが起きているのかもしれない、と考えた。
10年後にサーフィンをスイスイ乗りこなしている自分を想像して夢見心地になる(10年も続ける気かい!)。脳のネットワークを通じて未来の自分と脳をつなげることが出来るから、そのイメージは鮮明に画けたりする。そして、実際にボードを漕いだときは、自分の実際の身体はその経験をしていないから、体力が追いついてこない(あ~れ~!)。そして、波のスピードに合わせることなんかできやしない(ひーえ~!)。

 

成功しているかもしれない自分の姿をイメージする時に実際に成功している自分の脳と同期する。すると、成功したら人から批判や嫉妬に曝されて脳はダメージを受けてしまうことが計算に入っていない。明るいサイドばかりに注目を向けるが、必ず光があれば影があるから、成功を失う恐怖に取り憑かれていたり、人から陥れられる体験から人間不信になっていたり、と様々な成功に伴うストレスがそこには隠されていて、それを知らず知らずのうちに受けてしまうから「ど~ん!」とダメージを受けて「何もする気にならな~い!」と無気力状態になってしまう。成功した自分の苦しさや虚しさが現在の自分の惨めさ、虚しさに変化してしまって「自分は嘆いてばかりで何もしないダメ人間だ~!」となってしまう。

 

そう考えると全てが私の中で腑に落ちる。
あり得ないことを想像しているわけじゃなくて、ある世界で自分自身は成功しているけど、そこに思いを馳せた時に、成功している自分の脳とつながって、その成功の代償ともいえるストレスを受け負ってしまい苦しくなる。そして、無意識的にそこに行くのを拒絶したくなる。なぜなら成功は表面的には美しいが、その裏にある苦しみや孤独は堪え難いから。

 

無意識で何も無いブッタの中道の世界の方がよっぽど楽であるから、知らず知らずのうちに「動かない」ということで成功を拒否する選択をして別時間軸を作っているのかもしれない、と考えると興味深い。

 

(つづく)

TOP